一部弁護士事務所が運営しているところもありますが、現在「退職代行サービス」をうたっている業者のほとんどが民間企業です。
会社側との法的な交渉権は民間企業にはありません。法的な交渉ができるのは弁護士のみ。それ以外の人が報酬を得る目的で法的な交渉を行うことは「非弁行為」として禁止されています。
民間業者が行う退職代行は非弁行為ではないのでしょうか?年々増えている退職代行の依頼。それに伴い依頼者と業者間でトラブルも増えています。民間企業ができることとできないことをしっかりと把握した上で退職代行を利用するようにしましょう。
退職代行を利用する人が増えるにつれて、トラブルも増加しています。退職代行を利用してトラブルが発生した人(Aさん)の記事が日経新聞に紹介されていました。
Aさんの職場ではパワーハラスメントが横行し、上司から嫌がらせを受けていた。やめたいと訴えても取り合ってもらえないかもしれない。思い詰めて「即日退職可能」と宣伝していた業者に連絡した。
3日後にやめたいと伝え、代行業者は快諾した。だが法律では正社員がやめる場合、原則、会社に退職意思を伝えてから2週間が必要だ。会社と業者とのやりとりは進まず、業者を通じた退職は実現しなかった。業者は「交渉に失敗したら全額返金する」としていたが、払った約3万円を返さないまま連絡を絶った。
出典:日経新聞
退職できず、しかも支払ったお金も戻ってこなかったというトラブル。
ほとんどの業者は過去の退職成功率100%をうたい、万が一退職できなかった場合は全額返金するという制度を設けています。今回のAさんのように会社側が退職の意思を受け入れず退職できなかった場合の対応でそのまま逃げてしまう業者がいるというのは驚きです。
しかし、何の交渉権をもたない民間の業者に依頼した場合、こういったリスクが存在するということを覚えておくべきです。
民間業者には法的な交渉権はありません。退職代行サービスというのはどういったことをしてくれるのかというと、ただ単に依頼者の代わりに会社側に「退職します」という意思を伝えてくれるだけです。
通常は会社側もそれ以上の面倒は避けたいので、了承して退職という流れになりますが、会社側がNOと言ったり、聞く耳をもたなかったりした場合、そこから先は交渉が必要になってきます。しかし、民間業者は会社側と交渉することができません。つまり、先述のAさんのように打つ手無しの状態になってしまうというわけです。
最近では退職代行サービスのことを理解し、代行サービスからの伝言は受け入れないという会社も増えていると聞きます。交渉したり話を聞いたりする義務はないということを会社側も理解しているというわけです。
その為、労働組合の形を取る民間の退職代行サービスも増えてきました。依頼者に労働組合に参加してもらい、労働組合として会社側に退職の申し出をするというものです。労働組合であれば、団体交渉の権利があるので会社側は話を聞かざるをえないというわけです。
退職は「労働契約の解除」なので、それに関する交渉は法律事務にあたります。
民間の退職代行サービスは、自分たちはあくまで依頼者の意思を伝えているだけで交渉業務は行っていないから法的に問題はない、という立場を取っていますが、これはかなりグレーゾーンだと言われています。
弁護士の中には伝言行為だけでも非弁行為にあたる可能性があると訴える人も多く存在します。当サイトで取材した弁護士もかなりグレーゾーンだとおっしゃっていました。
今までは会社側が伝言を伝えられただけで面倒を避け、退職を認めていたから問題にならなかっただけかもしれません。今後、退職代行を巡る紛争がおきて裁判などになった場合は、違法行為であると認められる可能性は十分に存在します。
先述した労働組合としての交渉事も一部に限られ、多くの代行業者がうたっている「残業代支払い」、「退職金支払い」といった金銭がからむ交渉であれば、弁護士以外に行うことができません。
民間の退職代行サービスができることは交渉事一切なしで依頼者の退職意思を伝言することですが、弁護士によってはそれすらも非弁行為にあたるという方もいらっしゃいます。
代行業者は「大半の依頼は『やめたい』というだけ。依頼者の意思を伝えるだけで非弁行為ではない」と主張する。伝言役であり交渉はしないという立場だ。ただ深沢諭史弁護士は「依頼者より先に業者が退職の意思を勤務先に伝えることで法律効果が生じる。伝言だけでも非弁行為にあたる可能性がある」とみる。
出典:日経新聞
多くの場合は会社側が面倒やそれに割く労力を嫌い、すんなり受理することから問題が起こらずにきた側面があるようなので、退職代行サービスに対する理解を深めた会社側が受理しないという対応をした場合にトラブルとして問題が表面化していく可能性もあります。
そしてそういった問題が発生した場合に、交渉権のない業者は面倒を避け逃げてしまう可能性もあります。返金してもらえればまだしも、冒頭のAさんのように返金もされず、退職もできずというトラブルに発展してしまうケースも考えておく必要があるでしょう。
民間の退職代行業者が非弁行為であると認められた場合に、依頼者側にリスクはあるのでしょうか?
会社側と業者側でトラブルに発展し、裁判などになり、業者側の違法行為が認められた場合、依頼者側にも法的な責任が発生する可能性があると言われています。会社側から違法業者を差し向けたことによる損害賠償を請求される可能性も考えられます。
ただ、依頼者以上に業者側にとって大きなリスクを伴うので、あきらかに非弁行為とされるような交渉事はしないのが通常です。そういった面倒事に発展しそうな場合はすぐに手を引いてしまうようです。依頼する場合は、万が一スムーズにいかなかった場合の対応について事前にしっかり確認しておくようにしましょう。
あらゆるリスクを排除したいと考えるのであれば、弁護士が運営する退職代行サービスに依頼するのが一番安全です。
弁護士であれば、給与未払いや残業代支払いなど、退職以外の交渉事も可能になります。
ただし、一般の退職代行サービスよりも割高になります。民間業者の場合は一律3万円程度のところが多いですが、弁護士の場合は最初に5万。それに実費(切手代など)と支払い請求をした場合は受け取れた金額からパーセンテージで成功報酬がかかります。
ケースバイケースだと思いますが、そこまでお金がかかるのであれば、やはり自分自身で伝えることを検討するべきです。結局民間業者に依頼しても、やってくれることは退職の意思を伝えることだけ。であれば、自分で何とか伝えることはできないかをもう一度よく考えてみましょう。
もちろん職場の状況によっては絶対に自分で告げるのは無理というケースはあります。そういった場合は無理せずに代行を依頼することを検討し、独りで悩まずに一度相談してみてください。弁護士に依頼するのが料金面で難しいのであれば、上記のようなリスクをふまえた上で民間の業者に相談してみましょう。
その際は、スムーズにいかなかった場合のリスクなどをしっかり確認しておくことを忘れないようにしてください。非弁行為の有無に関しても事前にしっかりチェックしておくことで、何かトラブルになった場合のリスクを減らすことができます。
民間業者の中には団体交渉権を持つ労働組合が退職代行を行なってくれる「男の退職代行」や「退職代行サービス SARABA」といったサービスもあります。会社側がすんなり受け入れてくれるか不安な場合はこういった業者に相談してみるのもいいでしょう。そしてやはり一番安心なのは弁護士運営のサービスです。未払い給与の請求や残業代請求、退職金請求などにおける法的な交渉は非弁行為にあたるので一般の退職代行業者はできません。交渉が発生しそうな場合は弁護士が運営する退職代行サービスに依頼するようにしましょう。
ご自身のケースが交渉が必要かどうかはLINEなどの無料相談を利用して気軽に相談してみてください。ネット検索して色々なケースを調べても、人によって状況は異なるので、自分のケースを直接確認した方が早いです。
基本的には一般的な退職代行サービスと同じですが、労働組合(ユニオン)として退職代行を行なってくれます。
労働組合には会社側との団体交渉権があるので、一般の退職代行サービスよりは話し合い等ができるようになります。
一般の退職代行サービスの場合、会社側には交渉する義務はありませんが、労働組合の場合、会社側はこちらが望んだ団体交渉を拒否することができなくなります。
ただし、訴訟になった場合の交渉や示談交渉は弁護士以外できません。
会社側がまったく話を聞かないという場合には有利ですが、本格的な交渉に発展した場合は弁護士が必要になってくるので、基本的には一般的な退職代行サービスと同じと思ってかまいません。
料金が最安と非常に人気のあるサービスです。
弁護士が退職代行してくれるサービスです。弁護士は交渉することができるので、残業代請求、未払い金請求、有給消化請求など、あらゆる交渉が可能になります。もちろん損害賠償請求などの対応も可能です。
最も心強く間違いないのが弁護士による退職代行ですが、デメリットもあります。料金が高額なところです。一般の退職代行サービスは初期費用を一回払うだけのところがほとんどですが、弁護士の場合は、着手金の他、残業代や未払い金請求を行い金銭を受領できた場合は成功報酬が必要になります。着手金も一般の退職代行料金よりも高額です。
自身の退職に請求や交渉などが必要な場合は高額でも弁護士を頼んでおいた方が安心です。一般の退職代行会社に依頼したのち交渉が必要になった場合、再度弁護士に依頼することになり、二度手間になるだけでなく、料金より二重にかかってしまう可能性があるからです。
金銭的にどうしても一般の退職代行会社を選択する場合は、退職できなかったら全額返金してくれる【全額返金】制度を行なっている会社を選ぶようにしましょう。万が一退職できず、交渉や訴訟で弁護士への依頼が必要になった場合も、退職代行料金を返金してもらうことができます。
一般 | ユニオン | 弁護士 | |
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退職代行する人 | 社員 | 労働組合 | 弁護士 |
交渉や請求 | できない。 | 一部話し合いはできる。 | 交渉、請求可能。 |
料金 | 安い | 安い | 高い |
主なサービス |
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